もう一つのブログ

ここ」にもう一つブログを作成しました。ここには仕事や研究に関することを書いていますが、もう一つのほうには趣味(主に音楽など)に関することを書きたいと思います。時間があまりとれないので、実際に書くかはわからないのですが。とりあえず一つ書きました。

区別しにくい文字②

前にパソコン上で非常に区別しにくい文字があるということを以下の記事で書きました。

shiro-takeda.hateblo.jp

同じように学生向けの小テストをしていたらまた区別しにくい文字がありました。

↓の画像は「トラベルコスト法」という語句をパソコン上で書いたものですが、実は下側は間違いです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shiro_takeda/20230217/20230217222537.png

もっとフォントサイズを大きくすると以下のようになります。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shiro_takeda/20230217/20230217222534.png

大きくしても二つでどこが違うのか、下側のどこが間違いなのか非常にわかりにくいです。前の記事の場合、明朝体で表現するとすぐにおかしい部分がわかりました。今回のものを明朝体に変更したものが↓です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shiro_takeda/20230217/20230217222530.png

今回は明朝体にしても区別がつきにくいです。

私自身も下の語句のどこが間違っているのかなかなかわかりませんでしたが、答えを言うと、「ベ」の部分です。下側はカタカナの「ヘ」に「゛」ではなく、ひらがなの「へ」に「゛」がついています。ひらがなの「へ」とカタカナの「ヘ」は多くのフォントで区別がしにくいようです。

ただし、「とらべる」を変換すれば全部がカタカナになるのが普通なので、上のような書き間違いが起こることはほぼないと思います。むしろなぜ学生がこのような書き間違いをするのか不思議です...文字を一個ずつ変換でもしているのでしょうか?

Happy Hacking Keyboardのその後

2012年に↓の記事でHappy Hacking Keyboard (HHKB)Professionalを購入したことを書いたのですが、11年たった今でもこのキーボードをメインで利用しています。

shiro-takeda.hateblo.jp

これは大学の職場で利用しているものですが、家でも同じタイプのHHKBを利用しています。

キーボードを利用していると、キーの表面が汚れたり、キーの間にゴミが入ったりと結構汚れてきますので、たまに掃除をします。いつもは↓の動画で説明されているように、1)キートップを外して洗う、2)キーの下に入っていたゴミをとるなどですますのですが、今回は基盤を外して全体を洗いました。

きれいにはなったのですが、組み立てるときに上手くいかず、エンター・キーやスペース・キーなどを押しても反応がなくなってしまいした...分解した際に、「このページ」の3枚目の写真に写っているラバードームのいくつかがはがれて、位置がずれてしまったことが原因だったようです。まあなんとか上手く直せましたが、基盤の方まで分解するのは動かなくなるおそれが高くなるので、注意したほうがいいかもしれません。

掃除した結果、下のような見た目になりました。

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一方、↓11年前に購入した直後は以下のような見た目でした(上側のもの)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shiro_takeda/20220908/20220908214830.jpg

こうして比較すると、キートップは11年たってもあまり変わっていないのですが、本体部分の色がかなり色あせて黄色くなってしまっていることがわかります。まあ、さすがに11年たっていますから、仕方ないと思います。

キーボード自体の調子は11年経ってもあまり変わっていないと思います。このままできるだけ長く使いたいです。

さくらインターネットとshirotakeda.orgというドメイン名

2008年からさくらインターネットで場所を借り、さらにshirotakeda.orgというドメイン名も借りて、自分のホームページとブログを公開してきましたが、昨年、ホームページはgithub.ioに、ブログはこのはてなブログに移行しました(「このページ」で書いた通りです)。

移行した後も契約が残っていたので、「shirotakeda.org」(あるいは、「shirotakeda.sakura.ne.jp」)というURLは残っていたのですが、2022年の11月で契約も終了して、このURLにはアクセスできなくなりました。

10年以上、shirotakeda.org を利用していたので、ちょっと寂しい気もしましたが、それなりの費用を出してわざわざ場所やドメイン名を借りる必要性もなくなったので仕方ありません。

EUのCBAM(炭素国境調整措置)についての論文

EUは現在CBAM(carbon border adjustment mechanism、炭素国境調整措置)の導入を検討しています。CBAMとは、簡単に言うと、CO2などの温室効果ガスの排出規制が緩い国からの輸入財に対して、その炭素含有量に応じて税金(関西)を課すというような政策のことです(厳密には少し違いますが)。

EUは2030年に向けて、他の地域・国と比較し、かなり積極的なCO2の排出規制を導入することを計画していますが、そのような厳しい規制はEU域内の企業の国際競争力の低下をもたらし、それが炭素リーケージにも繫がるのではないかと懸念されています。CBAMはその炭素リーケージの防止策の一つとして導入されます。

そのEUのCBAMの導入の効果を分析した以下の論文が「独立行政法人経済産業研究所(RIETI)」のDiscussion Paperとして公刊されました。

Takeda, Shiro and Toshi H. Arimura (2023), "A Computable General Equilibrium Analysis of EU CBAM for the Japanese Economy", RIETI Discussion Paper Series 23-E-006, https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/23020002.html

「応用一般均衡モデルによるEU CBAMの日本への影響の分析」に簡単な日本語のサマリーもあります。興味がある方はどうぞ。

ホームページの更新

ホームページ内の「GAMS & CGE分析についての様々な情報」 というページを更新。

ずっとほったらかしにしていたので、リンク切れなどがたくさんあったのを修正し、さらに自分で書いた(ブログなどの)文書へのリンクをたくさん追加しました。

GAMSのマニュアル

以前はGAMSには主なマニュアルとして以下の二つがありました。

上がGAMSの開発元が直接作成しているもので、下は Bruce McCarl が独自に作成したものです。上は公式のマニュアルですが、公式のマニュアルにはとりあげられていないのに、下のマニュアルでとりあげられていることもあったので、どちらも重宝していました。

しかし、重複するところが多い、似たようなマニュアルが二つあるのはわかりにくいということで、現在では

というマニュアルに統一されたようです(経緯が、Prefaceで説明されています)。ですので、現在ではGAMSでわからないことがあれば、とりあえずこれを見てみるというのがよいようです。

ホームページのスマホ対応

自分のホームページ を修正しました。

これまでのホームページは基本的にパソコンで閲覧することを前提にして作成していたので、スマホで見た場合、レイアウトが崩れ、しかも文字が小さくて見にくいものでした。そこで、一応、スマホで見ても(ある程度)見やすくなるように修正しました。といっても、metaタグに viewport というものを追加して、あとはスタイルシートでメディアクエリを少し使うようにしただけですが。

そもそも私のホームページはスマホで見るような内容のものはほとんどないので、スマホ対応などしなくても実質的には問題ないと思います。ただ、簡単な修正でできそうなので対応しました。

パソコン上でhtmlファイルを修正しますが、いちいちスマホで閲覧して見た目の確認をするのは面倒なので、chromeデベロッパーツールでスマホをエミュレートしてチェックしました。便利ですね。

EmacsのSSKの辞書

もう結構時間がたってしまいましたが、Emacs上で動く日本語変換システムである「SKK」用の辞書を 「Windows上での Emacs の SKK の辞書の設定」にある方法でつくりなおしました。

SKKでは変換候補が登録された辞書を用意しておく必要があります。辞書は「SKK辞書- SKK辞書Wiki」にたくさん置いてあり、通常はこの中から使う辞書を選択します。

たくさんの辞書を設定するほど変換の際に表示される候補が充実します。ただ、たくさんの辞書を利用しようとするほどEmacsのメモリもたくさん使い動作が少し遅くなります(辞書サーバーという機能を使えばまた別なのですが、私は上手く使えないです)。今回はできるだけ変換候補を充実させるために、たくさんの辞書をまとめて利用するようにしました。その結果、登録されていない語句はほとんどないというくらいの大きな辞書になったと思います。ただ、同時に全然使う機会がないような語句まで変換の際の候補に表示されるようになってしまったので、逆に少し不便になりました。例えば、この文章はSKKで書いていますが、「遅く」を変換で出そうとしたところ、最初に表示された候補は「邌く」でした...「邌」なんていう漢字は初めてみました。

このような問題に対して、SKKでは個人辞書という仕組みがあります。個人辞書には自分が実際に利用した語句が登録され、その後はそれが優先的に候補に表示されるようになります。ですので、利用しているうちにだんだん個人辞書が充実してきて、よく使われる語句ほど候補として表示されやすくなり、自然に使い勝手が改善されていきます(他の日本語変換でも同じような仕組みになっていると思いますが)。

私はEmacsSKKを20年くらい前から使っています(SKK利用のログをとるskk-record.txtというファイルの中身を見ると、一番最初の記錄は「Sat Oct27 10:06:33 2001」となっています)。その間ずっと個人辞書がアップデートされてきていたので個人辞書に登録された語句は1万5,000個(!)にもなっていました。

辞書は変更しても、この以前からの個人辞書をそのまま利用していれば、「よく利用する語句を優先的に候補に出す+辞書の登録語の充実」という形にすることができたかもしれませんが、今回は辞書の変更と同時に個人辞書もこれまでのものは捨てて、新しく一から作成するようにしました。ですので、個人辞書がある程度充実するまでは上の問題が続きそうです。

個人辞書を一から作成しなおすことにした理由は、これまでの個人辞書の文字コードを上手く変換できなかったためです。

これまでSKKの辞書には元々の文字コードである「euc-jp(あるいは、euc-jis-2004)」を使ってきましたが、多様な文字が使える方がよいのでこれを「ユニコードutf-8)」に変換して利用するようにしました。一緖に個人辞書の文字コードutf-8に変換したかったのですが、なぜか変換が上手くいきませんでした。それで仕方なく、これまでの個人辞書は捨てて一から作成することにしました。

昔はWindows用のEmacsMS-IMEなどの日本語IMEを使うにはちょっと手間がかかったので(具体的には、特別なパッチを当てたEmacsでなければいけなかったので)、SKKを代わりに使うということもありました。私もそれが理由でSKKを使い始めました。しかし、現在では「tr-ime」を使うと普通のEmacs上でIMEも簡単に使えるようになりましたので、SKKを使うメリットも小さくなったかもしれません。それでも私はSKKの入力が結構好きなので使っています(SKKの入力方式は「かな漢字変換プログラム SKK の紹介 | Emacs JP」にあるように普通のIMEIとは全く違う方法です)。本当のSKK好きはEmacs上だけではなく、Emacs以外でもSKKを使えるように、通常のIMESKKで置き換えるまでしているようですが、いろいろ設定が面倒になるので、私はEmacs上でしか使っていません(Emacs以外ではATOKMS-IMEを使って日本語入力しています)。

逆S字型総費用関数

ミクロ経済学のテキストに「逆S字型総費用曲線」というものがよく出てきます。

Cost curve - Wikipedia

上のページの真中あたりの画像に描かれているTCという曲線のことで、生産量が増えるにつれ最初は傾きがだんだん緩やかになるが、途中から傾きが急になっていくタイプの総費用曲線のことです。ミクロ経済学の入門者用の教科書によく出てくるので、経済学を勉強したことのある人なら見覚えがある人が多いと思います。例えば、以下のテキストに出てきます。

これ以外の多くのミクロ経済学の入門書にも出てくると思います。もちろん、「総費用曲線=逆S字型総費用曲線」ということではないのですが、多くのテキストにおいて総費用曲線の形状の代表例のような形で出てくることが多いと思います。

この逆S字型総費用曲線を前提とし、さらに固定費用の存在も仮定すると、「損益分岐点」と「操業停止点」というものを定義できます。ですので、逆S字型総費用曲線が出てくるテキストでは、そのあとにたいてい損益分岐点と操業停止点の話につながります。

私は、この「逆S字型総費用曲線」がどうしてミクロ経済学の入門書で取り上げられるのかずっと疑問を持っていました。言い換えれば、これは入門書で取り上げる必要性がほとんどないのではないかと思っています。理由は二つあります。

まず、この逆S字型総費用曲線は、その後で勉強する経済学の応用分野でほとんど使わないからです。応用分野というのは、例えば、金融論、国際経済学、労動経済学、環境経済学、産業組織論などです。大学の経済学部のよくあるパターンでは、1年生、2年生のときにミクロ経済学の入門の勉強をして、その後、これらの応用分野の授業を受けるということが多いと思います。逆S字型総費用曲線(とそれから導かれる損益分岐点、操業停止点、供給曲線など)がこれらの応用分野の授業でよく出てくる、よく利用されるのなら、入門の授業で取り上げり意義は非常に大きいと思いますが、実際には全くと言っていいほど出てこないと思います(少なくとも私は見たことがないです)。

例えば、私の専門である環境経済学ミクロ経済学の応用分野ですので、ミクロ経済学で出てくる多くの概念を利用します。しかし、逆S字型総費用曲線、あるいはそこから導かれる損益分岐点、操業停止点、供給曲線を使うことは全くありません。

つまり、「逆S字型総費用曲線」は経済学部の入門の授業で扱うにもかかわらず、その後に学ぶ授業ではほとんど(あるいは、全く?)使われないということです。

後の授業でよく使うことになる重要な概念を入門書で取り上げるのなら、むしろ望ましいことだと思いますが、なぜその後に全く使わないような概念をわざわざ入門書の内容としてとりあげるのかがよくわからないというのが第一の理由です。

第二の理由は、この逆S字型総費用曲線が経済学の研究に使われているのをほとんど見たことがないからです。仮にその後の経済学の授業で出てこないとしても、それがちゃんと研究で使われているのなら、とりあげておくことに価値はあるかもしれませんが、理論的な研究でも実証研究でも、この逆S字型総費用曲線を利用している研究はほとんどなのではないでしょうか。費用曲線(費用関数)自体は多くの研究で使われると思いますが、その多くは1次関数や2次関数であって、逆S字型が前提とするような3次関数を利用していることを、私は見たことがないです(私が知らないだけで、実は結構あるのでしょうか?)

普通に考えれば、研究で使わないということは、それが現実の経済を分析する概念・ツールとして役に立たないということだと思います。なぜそんな概念をわざわざミクロ経済学を最初に学ぶ段階で出してくるのかがわかりません。

このように、「逆S字型総費用曲線」は

  • ミクロ経済学の応用分野では全く出てこない
  • 研究でもほとんど利用されていない

のが現状だと思います。それにもかかわらず、ミクロ経済学の初学者が利用する入門書で扱われていて、実際、入門用の授業で勉強することが多いと思います。

逆S字型総費用曲線+固定費用を仮定すると、操業停止点が出てきて供給曲線がジャンプする(不連続になる)など議論が小難しくなります。利用する概念であれば小難しくても学生に勉強させる意味はあるでしょうが、どうせ使わないのならもっと簡単なケース(2次関数の総費用曲線で固定費用なし)ですませてしまえばいいんじゃないかとずっと思っています。