地域間産業連関表を利用したCO2排出量削減のCGE分析

地域間産業連関表を利用したCO2排出量削減のCGE分析の論文が『環境経済・政策研究』に掲載されました。

白井大地・武田史郎・落合勝昭(2013)「温室効果ガス排出規制の地域間CGE分析」, 『環境経済・政策研究』, Vol.6, No.2, pp.12-25.

キャノングローバル戦略研究所の白井さんと日本経済研究センターの落合さんとの共同論文です。私はモデルの説明を書いたくらいで、実際の分析は他のお二方がされています。掲載された最終版とはちょっと異なりますが、Discussion Paperにしたものが「ここ」にあります。

分析の特徴は以下の通りです。

  • 静学的なCGEモデル
  • 日本を8地域に分割した地域間産業連関表(2005年のデータ)を利用
  • 地域間表に整合的な形の地域別CO2排出量データを作成
  • CO2排出の削減(排出権取引)を分析
  • 各地域の部門別生産、電力価格、GDP等への効果を分析

モデルは

Regional Effects of Trade Liberalization in Japan: A CGE Analysis Based on an Interregional Input-Output Table
のモデルをCO2削減の分析用に修正したものです。「このファイル」で数式によりモデルを説明しています。

地域によって温暖化対策の効果が異なる可能性が高いということはよく指摘されます。それは地域によって以下のような点が異なるからです。

  • 消費パターンが異なる(例えば、寒冷地の方が暖房用の石油利用が多い等)
  • 発電方法の構成が異なる(火力発電が多いか、非火力が多いか)
  • 生産パターンが異なる(温暖化対策の影響を受けやすいエネルギー集約産業が多いか少ないか)
上の論文の分析では2個目と3個目の影響が大きいという結果が出ました。3個目の効果はCGE分析で生産サイドへの効果(産業への影響を通じてそこで雇用される人や資本に生じる効果)も考慮していることから捉えることができた効果だと言えます。