以下のサイト、CGE分析のレクチャーを提供する会社(組織)のサイトです。
このページの最初に以下のような説明があります。
CGE models are NOT 'black boxes'. Given an understanding of general equilibrium (GE) microeconomics, and some macroeconomics, and the ability to read a simple programming language, all model insights are ultimately obvious. GE systems may be complex, just as the world is complex; but an unwillingness to learn enough economics and a 'language' does not make a CGE model a `black box'.
「CGEモデルはブラックボックスではない。一般均衡のミクロ経済学とある程度のマクロ経済学の理解があり、簡単なプログラミング言語の理解があれば、モデルから導かれる全ての洞察は容易に理解可能だからです」というようなことが書かれていますが、ここでの「ブラックボックス」という用語の使い方はちょっとおかしいと思います。
この説明では、それについての知識がなく、理解できないことは全てブラックボックスということになってしまいます。例えば、
- 私はロシア語の知識が全くないので、ロシア語で書かれたものはブラックボックス
- 微分方程式もわからないので、微分方程式で表現されているものは全てブラックボックス
- 電気回路などの知識も全くないのでパソコンやスマホの中身もブラックボックス
- DSGE モデルも難しくてよくわからないのでブラックボックス
- 最近経済学の一部ではやっているらしいStructual Gravityモデルもよく知らないのでブラックボックス
ということになります。しかし、こんなものは単に知識がなくて理解できないということであって、これをブラックボックスとは普通は言わないと思います。そもそも、ここで言っているような、勉強さえすれば誰でも理解できるようなもの(言い換えれば、勉強していないから理解できないもの)をブラックボックスなんて呼んでいたら、世の中ブラックボックスだらけになってしまいます。
ブラックボックスというのはそうではなく、内部の仕組みが明らかではない(公開されていない)ものを普通指すのだと思います。そして、それは勉強するということでは解消できないようなものだと思います。仕組みが明らかになっていなければ勉強しようがないですから。
ブラックボックスをこのような意味で捉えれば(これが普通の解釈だと思いますが)、(多くの)CGEモデルはブラックボックスだと言っていいと思います。というのは、CGE 分析では、分析内容(シミュレーションで利用されているモデルやデータ)の詳細を第三者が把握することができないことが多いからです。
これはCGE分析で使われているデータやプログラムが非公開になっていることが多いためであって、経済学の理論やプログラミングがわかれば解消する問題ではないです。
なぜこんなことを急に書いたかというと、最初に紹介した会社から「うちのコースを受講すればCGEモデルはブラックボックスじゃなくなるよ」という変なメールがたくさん来るからです。ミクロ経済学とプログラミングを勉強するとブラックボックスじゃなくなるって、そんなのブラックボックスでも何でもない...
この話についてはまた詳しく書きたいと思います。