「経済学検定試験」というものがあります。ERE(Economics Record Examination)とも呼ばれます。名前の通り、経済学の検定試験で、経済学の知識・理解度を測るための試験です。
「ERE」は経済学の中の「ミクロ経済学」、「マクロ経済学」、「財政学」、「金融論」、「国際経済」、「統計学」の6つの分野が出題範囲となります。ただ、その中から「ミクロ経済学」、「マクロ経済学」の2つのみに限定した「EREミクロ・マクロ」という簡易版の試験もあります。通常のEREの受験者数は非常に少なく、ほとんどの受験生はこちらの簡易版のEREミクロ・マクロを受験しています。
例えば、2017年12月3日におこなわれた、第33回の試験では 「このファイル」 にあるように
- EREの受験者: 68名
- EREミクロ・マクロの受験者: 1261名
となっていて、ミクロ・マクロが全体の95%を占めています。ですから、EREミクロ・マクロがむしろメインの試験と言ってよいと思います。
なぜ ERE の話をするのかというと、ERE の成績優秀者についておもしろい点があるからです。
http://www.ere.or.jp/results/achiever.html
上のページにEREの試験における成績優秀者が掲載されています。例えば、2017年12月3日におこなわれた第33回の試験の結果、特に、受験者のほとんどを占めているEREミクロ・マクロの方の成績優秀者を見てください。
名前が非公開である人を除くと成績上位の40名が掲載されていますが、名前から判断するに40名中35名(87.5%)が中国人です。
これは第33回だけの話ではなく、最近のEREミクロ・マクロでずっとこの傾向があるようです。5年くらい前から中国人が増え始め、最近ではずっと中国人が上位を占めるようになっています。
日本人が作成して、日本でおこなっている経済学の検定試験にもかかわらず、それで上位の成績をとっているのはほとんど中国人だということです。なぜこういう状況になっているのでしょうか? これは単なる推測ですが、多くの中国人が日本の大学院受験のためにこのEREを受けているのではないかと思います。
経済学の大学院ではこのEREの試験を入試の代わりに利用しているところがかなりあります(EREの試験を受けていると筆記試験が免除される仕組み)。そのような大学院を受験するために中国人がこのEREを受験しているのだと思います。しかも、いい大学院に合格するためにかなり勉強しているので、いい成績をとっているのだと思います。
中国人が成績の上位を占めることが悪いことというわけではないのですが、おそらくERE を作成・提供している人はこういうような状況になるとは考えていなかっただろうなとは思います。
それと、EREミクロ・マクロではなく、6分野が範囲の ERE については一回の試験の受験者が100名もいません。第33回はたった68名ですし、第32回が58名ですから年間たった120名です。年間の受験者が120名しかいないというのは資格試験としての人気がほとんどゼロのようなものです...そもそもこれでは問題作成の費用で赤字になってしまっているかもしれないですね。
ちなみに他の経済に関するような資格試験の受験者を調べてみると以下のような状況です。
- 中小企業診断士の一次試験の受験者数は2017年:16,681人
- 日商簿記の2級の2017年の実受験者数(3回の試験の合計):151,922人
- 販売士2級の2017年の実受験者数(2回の試験の合計):11,156人
- FP技能検定2級2017年の実受験者数(3回の試験の合計):58,635人
なぜ唐突にEREのことを話題にしたかと言うと、よく受験生から経済学部に進学するとどんな資格がとれるのかというような質問をもらうからです。経済学に関する資格というと、このEREがまずあるのですが、あまり薦められるような資格とは言えないので、どんな資格をとれるかと聞かれたときに困ってしまいます。
ただ、経済学の大学院に進もうと考えているでしたら人は(日本人であれ、外国人であれ)EREでいい点をとることを目標にして準備するのがいいと思いますので、積極的にEREを受験するといいのではないかと思います。