熊本での日本経済学会のこと

熊本での学会のこと


学会では、イギリスのケント大学の柴山さんの論文のコメンテイターをしました。環境(森林)のオプション価値を一般均衡モデルで分析した論文です。オプション価値の分析手法のことはよく知らなかったので、Dixit & Pindyck (1994) Investment under Uncertainty を読んでみましたが、数学が難しくてよくわかりませんでした。というわけで、研究の手法は結局よくわからず、まともなコメントはできなかったのですが、研究内容はすごくおもしろいものでした。

「環境は一度破壊してしまうともう二度と元に戻せないものだから、その利用・開発は慎重に行うべきだ」というような考え方はよくあると思いますが、オプション価値の理論はまさにその考え方を経済学のモデルに導入するためのツールと言えると思います。余裕ができたら私も勉強してみたいと思いました。


自分でも発表しましたし、私の共著者も発表しました。どちらもCGEモデルを利用した温暖化対策の分析の論文です。私の論文のコメンテイターは、千葉商科大学の小林航さんにしてもらいました。小林さんはCGE分析は専門の人ではないので、コメント考えるのに困ったと思いますが、いろいろ参考になるコメントをしてくれました。

日本にはCGE分析をしている人が少ないので、学会で発表するとなると、いつもコメンテイターを選ぶのに困ります。専門の人に頼むとなると、人数が少ないので、いつも同じ人に頼まなくてはいけなくなってしまいますし。やっぱり、自分の研究にコメントをくれるような人が周りにたくさんいる方がいいですから、日本でCGE分析を専門にするのはあまりいいことじゃないですね。今回の学会でも何百もあった発表の中で、CGE分析を使った研究を発表している人は私(と私の共著者)以外全く見当たりませんでしたし。

「専門にしている人が少ない→教える人が少ない→勉強する人が少ない→専門家が少ない→以下繰り返し...」というような状況なので、当分、日本じゃCGE分析をする人は増えないと思います。


あと、私の発表したセッションでは、発表用のパソコンに工人舎というメーカーのミニノートパソコン(たぶんこれ)が使われていたのですが、これがとんでもない代物でした。 ものすごく不安定でフラッシュメモリからファイルをコピーしようとしたら、二回も落ちてブルースクリーンがでました。しかも、再起動に5分以上時間がかかりるという...結局、使い物にならず、座長を務めていた慶応大学の大沼先生のノートパソコンを代わりに使うことになりました。二回も落ちて手間取ったせいで発表の開始が5分遅れました。わけのわからない安物のノートパソコンを使うのはやめて欲しいです。