日銀政策委員会メンバーの須田美矢子先生の講演

今日、なぜだか須田美矢子先生がうちの大学に来て講演をしてくれたので、聴きにいきました。経済学勉強している人ならたいてい知ってると思いますけど、↓の人です。

政策委員会のメンバー:日本銀行

金融は専門でもないですし、むしろ素人といってもいいくらいなので、まあなんというか講演内容にそれほど関心があったわけではないです。講演ではちょうど今日ニュースになっている↓に関する話も聞けました

ゼロ金利解除「機は熟した」10年前の日銀決定会合 (7月30日15時44分配信 産経新聞)」

 日銀が30日公表した平成12年1~6月の金融政策決定会合議事録によると、ゼロ金利政策を解除した同年8月の4カ月前から、当時の速水優総裁がゼロ金利解除に向け「機は熟している」などと述べて解除に前のめりだったことがわかった。一部の出席者からは米国経済の不透明感を指摘する声が上がるなど、解除後に起こる米国ITバブルの崩壊を“予見”する声も出ていた。

 議事録によると、1~3月の時点で速水総裁は「経済の自律的回復に向けた展望が得られたと判断するには材料不足」と述べるなど慎重姿勢だった。

 しかし、3月の国内卸売物価指数が2年1カ月ぶりに前年同月比プラスに転じたことや、3月短観で設備投資意欲の改善がみられたことなどから、4月10日の会合で「ゼロ金利という異常な政策と実体経済との間の整合性が問題になる局面に入ってきた」と発言した。

 その後の会合でもゼロ金利解除に積極発言を繰り返し、他の政策委員も「デフレ懸念の払拭(ふっしょく)が展望できる情勢がほぼ到来しつつある」(6月12日、藤原作弥副総裁)など、ゼロ金利解除の環境が整いつつあるとの見方を示すようになった。

 ただ、一部の出席者からは、ITバブルにわく米国経済をリスク要因として指摘する声も上がっており、6月28日の会合では、政府から出席していた林芳正大蔵政務次官が「米国経済に不透明感がみられ、景気動向についてはなお見極めが必要」と述べるなど、慎重な対応を求めていた。

 日銀はその後、6月短観の結果などを踏まえ、政府側の猛反対を押し切って8月11日の会合でゼロ金利政策を解除した。しかし、直後に米国のITバブルが崩壊し、わずか半年後に量的緩和政策を導入。「日銀は判断を誤った」と、強い批判を浴びることになった。

金融政策決定会合の議事録は10年たったら公表されることになっていて、ちょうど今日10年前の議事録が公表されたそうです。

また、講演では、「インフレターゲット」やら「日銀の国債買い取り」といった主張がいかにおかしいのかという説明がたくさんあったのですが、一方で今日↓のようなニュースも出てますね。

10年で70%の成長可能? 民主議連、日銀にインフレ目標要求 (7月30日10時49分配信 産経新聞)」

 民主党の有志議員でつくる「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)は30日、総会を開き、今後10年間で70%の経済成長を目指すとする「デフレ脱却・経済成長プログラム」を可決した。目標を達成するため、日銀による積極的な金融緩和策を求めていく。

 同プログラムでは、日本の潜在成長率を実質で年率2・5%と想定。年率2・5%の物価上昇を実現すれば、2020年度末までに名目で約70%強の経済成長が可能としている。

 また、こうした経済成長を実現させるため、国家戦略局内閣官房が経済政策の司令塔となることを強調。日銀に年2~3%の物価上昇率を目標とする「インフレターゲット」の導入を提言した。

 同議連の松原仁会長は「参院選における民主党の敗北は具体的な政策を出さずに増税議論を持ち込んだことが原因」と指摘。「日銀は(経済成長に必要な)すべての手段を取っているわけではない。経済の復興は日銀の真剣な金融政策から始まる」と述べた。

ちょっとここらへんの話について検索してみると、腐るほどたくさんできてきますね。温暖化対策の議論も賛成派と反対派で結構激しく議論していますが、日銀の政策が適切かどうかについてはそれ以上に激しくやりあってるみたいですね。しかも、ずっと昔から。

今日の講演は無料でしていただいたのですが、日銀は広報活動の一環としてこうした講演を数多くおこなっているようです。でも↑のようなニュースが出るということは、日銀の考え方に反対する人が最近増えているということでしょうか。講演の効果があまり出てないかもしれないですね。

まあ、どっちが正しいかはぼくには全然わかりません。ただ、講演の中で「デフレの主な原因は生産性の低迷」、「デフレ克服には生産性を向上する政策が必要」、「そのため日銀はイノベーションのための資金の供給に手を貸している」というような話が出たときにはさすがに不思議に思いました。仮にデフレの原因が生産性の低下としても、だからといって日銀が生産性向上に貢献しようとするのはさすがに無理があるんじゃないでしょうか。日銀が民間に貸し出し増やしたってそれが生産性の向上に結び付くとは考えにくいですし。

あと、「バーナンキ(この人よく知らない)やクルーグマン(こっちは知ってる)は昔日銀を批判していたが今では考えを変えたのに、日本には未だにインフレターゲットやら国債の日銀買い取りを主張する人がたくさんいて困る」という話がありました。こんなこと言ったら怒るかもしれませんが、もし須田先生がバーナンキクルーグマンと同じくらいアカデミズムの世界で「業績」があれば、みんな(まあ、少なくとも経済学者は)もっと素直に言うことを聞くだろうにとふと思いました。日銀の人が論文書いて有名どころのジャーナルにのっければ一番話が早い。若い人に書かせるべし。