論文における参考文献の形式・情報

昔は経済学では研究は個人でおこなうことが多く、論文も単著が多かったと思いますが、今では経済学でも共同研究が多くなり、論文も共著が増えてきました。正確な割合はわかりませんが、半分以上の論文は共著論文じゃないかと思います(単なる私の印象ですが)。特に、実証分析の論文は共著が多いと思います。

共著論文が増え、さら一本の論文における著者数も増える傾向がありますが、経済学では著者の数はせいぜい数名程度(多くても十数名)だと思います。これに対し、研究分野によっては、共同研究の規模がはるかに大きく、著者数も非常に多くなることがあるようです。

例えば、次の二つの論文はどちらも物理学(天文学?)の分野の論文のようですが、著者数は Aad et al. (2012) がおよそ3000名(!)、Abbott et al.(2016) はおよそ1500名です。

Aad et al. (2012), Physics Letters B, http://dx.doi.org/10.1016/j.physletb.2012.08.020

Abbott et al. (2016), The Astrophysical Journal, http://dx.doi.org/10.3847/2041-8205/826/1/l13

別の論文を自分の論文で引用した場合、参考文献の部分に引用した文献の情報を掲載することになりますが、上記のような論文の場合、その全ての著者を掲載することは難しいです。

このような場合、著者の一部のみを掲載することが普通のようです。例えば、

Aad, G. et al. (2012) "Observation of a new particle in the search for the Standard Model Higgs boson with the ATLAS detector at the LHC," Physics Letters B, Vol. 716, No. 1, pp. 1–29, DOI: 10.1016/j.physletb.2012.08.020.

のように筆頭著者の名前のみを出す場合もあれば、

Aad, G., T. Abajyan, B. Abbott et al. (2012) "Observation of a new particle in the search for the Standard Model Higgs boson with the ATLAS detector at the LHC," Physics Letters B, Vol. 716, No. 1, pp. 1–29, DOI: 10.1016/j.physletb.2012.08.020.

のように第三著者まで名前を出すような場合もあるようです。これは雑誌によって変わってきます。

BibTeX において上記のような処理をおこなう最も単純なやり方は自分で BibTeX のデータベース(bib ファイル)を修正することです。具体的には、実際には多数の著者が登録されている author フィールドの値を

author = {G. Aad and others}

author = {G. Aad and T. Abajyan and B. Abbott and others}

のように"and others"を用いて書き換えてしまうということです。こうすれば参考文献部分が上記のように処理されます(これはどの bst ファイルを使っているかにもよりますが)。

しかし、この方法では著者数が非常に多い論文を引用しようとする際に、いちいち自分でデータベースを書き換える必要があり少し面倒です。

jecon.bst は元々経済学分野を念頭に置いて作成しており、対象となる論文はそれほど著者数が多くありません。そのため参考文献部分では常に全ての著者の名前を掲載するようにしていましたが、今回、上記のように著者数が非常に多い論文をそのまま扱えるように jecon.bst に修正を加えました。

具体的には、

  • N1人の著者がいる場合は、最初のN2人のみの名前を掲載し、残りは「et al.」(日本語論文の場合は「他」)で省略する。

という処理にしました。

N1 と N2 の数値はそれぞれ "bst.max.author.num" と "bst.max.author.num.display"で決定されています(デフォールト値はそれぞれ 8 と 3です)。

詳しくはjecon-example.pdfの「著者数が非常に多いケース」という項か jecon-many-authors.pdfの説明を読んでください。

話は変わりますが、先程上で例として挙げた

という論文はそれぞれ "Physics Letters B"、"The Astrophysical Journal Letters" という雑誌の論文ですが、どちらも参考文献部分では論文の情報として著者名、雑誌名、巻、ページ、年しか掲載していないです。つまり、論文のタイトルは掲載していないです。参考文献部分の形式、情報は雑誌や分野によってかなり違いますが、どんな分野であっても参考文献情報として論文のタイトルは掲載するものだと思っていたので、これにはちょっと驚きました。

まあ、論文へのリンクは張ってあるので、リンク先に飛べばタイトルもわかります。ただ、いちいちタイトルを見るためにリンク先に飛ぶのも面倒に感じますが、そうでもないのでしょうか?それとも論文のタイトルが重要な情報と見なされていないということでしょうか?私個人は、参考文献部分を見るときには、やっぱり論文のタイトルを知りたいので、タイトルは必ず掲載して欲しいなと思います。

いずれにせよ、研究分野によって、参考文献部分の書式、情報もかなり違うということがわかりました。