MPSGEにおけるニュメレール(numeraire)の設定について

通常,MPSGE(というより多くのCGE分析)で記述するモデルは実物モデル,つまり名目変数についてゼロ次同次の性質を持つモデルです。さらに,Walras法則が成り立つ,つまり市場均衡条件の一本はredundantとなるモデルです。「名目変数についてゼロ次同次」+「Walras法則」というモデルでは,一つの価値基準財(ニュメレール,numeraire)を指定して解く,つまりある一つの財の価格を1で固定して解くのが普通です。

しかし,MPSGEでは解く際に自動で名目値の水準のnormalizationが行なわれるので,numeraireを指定しなくて解くことができます.

この点について以下のメールでRutherfordが説明しています。

一つ目のメールから

I messed around the with numeraire selection issue for a long rainy winter in Bergen in 1983 and came up with what seemed to me to be a reasonably good heuristic. MPSGE uses the user-specific initial prices to evaluate income levels, and then chooses the largest income to use for normalizing prices. This seems to provide reliable numerical performance at the cost of requiring a user to do a bit of arithmetic at the reporting stage.

これは所得変数を一定に固定し、計算をしているということを示しています。普通はある財の価格を固定しますが、MPSGEでは価格ではなく、ある一人の消費者の所得水準を固定するという方法をとっています。所得を固定するというと変に思うかもしれませんが、要するに名目変数を一つ止めればよいのであって、それは価格であろうが、所得であろうがかまいません。

二つ目と三つ目のメールは所得の固定が実際にどのように行われているかを詳しく説明しています。